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つくる
君の石像をつくる
君の美しさを形にするために
君の美しさを全身で感じるために
僕は君の石像をつくる
古代エジプトの王族みたいに
鉄よりも硬い花崗岩をミスリルで彫る
君の全身を削り起こすとき
僕は君のからだをこの手に感じている
一心不乱にノミを打つ至福のとき
だが まだここに君はいない
ここにあるのはかろうじて手足のある
ロボットのようなオブジェ
旅はここから始まるんだ
僕は君を探求する
西日の入り込む薄暗い部屋
僕らは時を超えて黄金色に染まる
君のしなやかな筋肉と丸みを捉えたとき
僕は君に出会う準備をはじめる
一心不乱にノミを打つ至福のとき
だが まだここに君はいない
ここにある肉感的なプロポーションは
しかしまだ匿名の人形
旅はここから最後の王宮へ
僕は君のすべてを知る
君の瞳を 唇を見つめながら
果てしない時間 僕は僕の心と対話する
君の挑みかかるようなまなざしは
僕が求めた君の真実の姿
一心不乱にノミを打つ至福のとき
ついに 僕は君にたどりついた
笑うとき右の鼻が少し膨らむくせを
思い出したとき
いつしか君はここに存在していた
君を失ったあの日からずっと
僕は君の姿を追い求めて
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